ビジネスメールやチャットで毎日のように使う「よろしくお願い申し上げます」という言葉ですが、ふと「これって目上の人に使っても大丈夫?」と不安になることってありませんか。特に「いたします」との使い分けや、漢字で書くべきかひらがなにすべきかといった細かいルールは、意外と学校や研修では教えてもらえないものです。実は私、以前はなんとなく漢字の方が丁寧だと思い込んで多用していた時期がありました。でも、言葉の意味やビジネスシーンでの正しいマナーを知ることで、自信を持って相手との距離感をコントロールできるようになりますよ。ここでは、メールの返信や英語での表現、同僚へのチャットでの省略ラインなど、明日からすぐに使える実践的な知識をお伝えします。
- 「いたします」と「申し上げます」の決定的な違いと使い分け基準
- 「宜しく」を漢字で書くことがビジネス文書で推奨されない理由
- メールやチャットですぐに使えるシーン別の具体的な例文セット
- 英語やチャットツールにおける現代的なコミュニケーションマナー
よろしくお願い申し上げますをビジネスで使う際のマナー
ビジネスコミュニケーションにおいて、結びの言葉は単なる定型文ではありません。相手に対する敬意の度合いや、こちらの「本気度」を伝える重要なシグナルなんですよね。ここでは、意外と知らない敬語の序列や表記のルールについて、基本からしっかり解説していきます。
いたしますと申し上げますの使い分けと違い
毎日のメール作成で、一番迷うのがここではないでしょうか。「よろしくお願いいたします」と「よろしくお願い申し上げます」。どちらも敬語として間違いではありませんが、相手に与える印象の重さがまったく異なります。
ざっくり言うと、「いたします」は標準装備、「申し上げます」はフォーマルな正装というイメージを持ってください。
使い分けのポイント
- よろしくお願いいたします:「する」の謙譲語。相手を立てつつも、へりくだりすぎない中立的な表現です。直属の上司や、普段やり取りしている取引先にはこちらがベスト。軽快でスムーズな印象を与えます。
- よろしくお願い申し上げます:「言う」の謙譲語。自分を低くして相手を敬う度合いが一段高い表現です。役員クラス、新規の取引先、あるいは謝罪の場面など「絶対に失敗できない時」に使います。
普段の業務連絡で毎回「申し上げます」を使っていると、相手によっては「なんだかよそよそしいな」とか「慇懃無礼(丁寧すぎて逆に失礼)」と感じさせてしまうリスクもあるんです。相手との距離感に合わせて、この2つを戦略的に使い分けるのが「できる大人」のテクニックですよ。
ひらがなと漢字の正しい使い分け基準
変換候補に出てくるからといって、「宜しくお願い致します」と漢字フルコースで書いていませんか?実はこれ、公的な文書作成のルールに照らし合わせると、少し注意が必要なポイントなんです。
まず、「宜しく」という漢字。「宜」は常用漢字表では「ギ(適宜など)」という読み方しか認められておらず、「よろしく」という読み方は表外読み(常用漢字表にない読み方)になります。そのため、公用文や厳格なビジネス文書ではひらがなで「よろしく」と書くのが正解とされています。
「致します」も要注意!
「お願いいたします」の「いたす」は、動詞「願う」にくっついて謙譲の意味を添える「補助動詞」です。日本語のルールでは、補助動詞はひらがなで表記するという原則があります。「私が掃除を致します(本動詞)」なら漢字でOKですが、「お願い」に続く場合はひらがなが最も知的でミスのない選択です。
もちろん、年賀状などの儀礼的な挨拶では、見た目の重厚感を出すためにあえて「宜しく」と書くこともあります。ただ、通常のビジネスメールでは、ひらがなの方が柔らかい印象を与えますし、何より「ちゃんとルールを分かっている人だな」という信頼感につながりますよ。
上司や目上の人に送る際の注意点
目上の方へのメールで「よろしくお願い申し上げます」を使うときは、それ単体で終わらせず、相手を気遣う「クッション言葉」をセットにするのが鉄則です。
いきなり「お願いします」とだけ書くと、いくら丁寧語でも「これやっておいて」という命令のニュアンスが少し残ってしまうんですよね。そこで、以下のような言葉を直前に挟んでみてください。
| クッション言葉 | 効果とニュアンス |
|---|---|
| お忙しいところ恐縮ですが、 | 相手の時間を奪うことへの配慮を示します。最も汎用的です。 |
| お手数をおかけいたしますが、 | 相手に労力をかけさせることへの詫びを入れます。作業を依頼する時に。 |
| ご多忙の折、大変恐縮ではございますが、 | さらに敬意を高めた表現。役員クラスなどに効果的です。 |
こうした一言があるだけで、「あなたの忙しさは十分理解していますよ」というメッセージが伝わり、相手も気持ちよく動いてくれるようになります。
英語で伝える場合の適切な表現
グローバルな仕事をしていると、「よろしくお願いします」を英語でどう言うか悩みますよね。これ、実は直訳しようとすると失敗します。英語には「今後の関係性まで含めて包括的に頼む」という便利な言葉が存在しないからです。
英語では、文脈に応じて「何を求めているか」をクリアにする必要があります。
シーン別・英語の「よろしく」変換ガイド
- メールの結び(標準):
Best regards, / Sincerely,
(これらは形式的な結びで、お願いの意味は含みません) - 事前に感謝して依頼する:
Thank you in advance.
(便利ですが、目上の人には「やって当然」という圧力に聞こえることもあるので注意) - これから一緒に働く時:
I look forward to working with you.
(「楽しみにしています」というポジティブな感情を伝えます) - いつもありがとう(継続):
Thank you for your continued support.
(「今後ともご愛顧を」に近いニュアンスです)
無理に日本的な湿っぽい情緒を持ち込むよりも、英語メールでは「感謝」と「次のアクション」を明確にする方が、結果として丁寧な印象を与えられますよ。
チャットツールでの省略とマナー
SlackやTeams、Chatworkなどが普及して、コミュニケーションのスピード感が変わりましたよね。「毎回『よろしくお願い申し上げます』なんて打ってられない!」というのが本音ではないでしょうか。
結論から言うと、チャットツールであっても締めの挨拶は省略しないのが無難です。「お世話になっております」などの前置きはカットしてもOKですが、最後の一文がないと、ただの「データの投げつけ」や「ぶっきらぼうな指示」に見えてしまうリスクがあるからです。
ただし、相手との関係性によっては省略や簡略化もアリです。
- 同僚・後輩・親しいチーム:
「よろしくお願いします!」のスタンプ1つでOK。効率重視でいきましょう。 - 上司・クライアント:
スタンプはあくまで「既読確認」や「感情の補足」として使い、重要な依頼や報告の際は、テキストでしっかり「よろしくお願いいたします」と打つのがマナーです。
「取り急ぎ」は禁句かも?
スマホから返信する際につい使いがちな「取り急ぎご報告まで」という表現。これは目上の人には「急いでいるから丁寧さは省くね」という意味に取られかねないので避けましょう。「まずはメールにてご報告申し上げます」と言い換えるだけで、ぐっと大人な対応になりますよ。
ビジネスでよろしくお願い申し上げますを活用する例文集
ここからは、実際にコピペや微調整をして使える具体的な例文をご紹介します。言葉選び一つで、相手が「よし、やってやろう」と思うか、「面倒だな」と思うかが決まります。文脈に合わせた最適なフレーズを選んでみてください。
メール返信ですぐ使える基本フレーズ
日常的なやり取りでは、シンプルかつ相手への配慮が見えるフレーズが好まれます。特に、返信やアクションが必要な場合は、期限や条件を添えるのがポイントです。
回答を求める場合
お手数をおかけいたしますが、〇月〇日までにご回答いただけますと幸いです。
ご確認のほど、よろしくお願い申し上げます。
「幸いです」とすることで、「絶対にやれ」という命令感を薄めつつ、こちらの希望を明確に伝えることができます。これが最も角が立たない便利な言い回しですね。
何卒を組み合わせて強調するテクニック
相手に少し無理なお願いをする時や、絶対にこちらの要望を通したい時は、副詞の「何卒(なにとぞ)」を頭につけます。「何卒よろしくお願い申し上げます」というセットは、ビジネス文書における最強クラスの懇願フレーズです。
ただし、会議室の予約変更のような些細な連絡でこれを使うと、「大げさすぎる」「何か裏があるのか?」と相手を引かせてしまうことも。ここぞという時の「切り札」として取っておきましょう。
ご査収のほどとセットで使う場合
請求書や見積書、納品データなどを送る際によく見る「ご査収(ごさしゅう)」。これは「よく調べて(査)、受け取って(収)ください」という意味です。
添付ファイルがない時はNG!
ファイルを何も添付していない連絡メールで「ご査収ください」と言うのは誤用です。受け取った相手が「あれ?添付漏れかな?」と不安になってしまいます。単なる確認なら「ご確認のほど」を使いましょう。
例文:
「お見積書を添付いたしました。
ご査収のほど、よろしくお願い申し上げます。」
依頼時に使えるご検討のほどの活用法
提案や営業メールなどで、相手にYes/Noの判断を委ねる時は「ご検討」を使います。「やってください」と迫るのではなく、「やるかどうか考えてみてね」と相手の決定権(Autonomy)を尊重する姿勢を見せる高等テクニックです。
例文(新規提案):
「突然のご連絡にて大変恐縮ではございますが、弊社サービスが貴社の課題解決の一助となれば幸いに存じます。
ぜひ前向きにご検討いただけますよう、お願い申し上げます。」
謝罪やお詫びメールでの結びの言葉
謝罪メールの最後を「よろしくお願いします」で締めると、「本当に反省してる?」と思われてしまう危険性があります。お詫びのシーンでは、関係修復と反省の意を込めた特別な結びが必要です。
ここでは「ご指導ご鞭撻(ごしどうごべんたつ)」という言葉が役に立ちます。「厳しく指導してください」という意味で、反省と成長意欲を示すことができます。
例文(深謝):
「多大なるご迷惑をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます。
今後は管理体制を抜本的に見直す所存です。
誠に勝手なお願いではございますが、引き続きご指導ご鞭撻を賜りますよう、伏してお願い申し上げます。」
よろしくお願い申し上げますでビジネスを円滑にする
ここまで、様々なシーンでの使い分けやマナーを見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
「よろしくお願い申し上げます」は、単なるメールの終了合図ではありません。それは、「あなたとの関係を大切にしたい」という意思表示であり、自分自身のプロフェッショナルとしての信頼性を証明するツールでもあります。
表記のルールや敬語のランクを知ることはもちろん大切ですが、一番重要なのは「相手が今どんな状況で、どう言われたら心地よいか」を想像する心です。形式にとらわれすぎず、その時々の相手との距離感に合わせて、最適な言葉を選んでみてくださいね。
この記事が、あなたの毎日のメール作成の迷いを消し、より円滑なコミュニケーションの一助となれば嬉しいです。
※本記事の情報は一般的なビジネスマナーに基づいておりますが、企業ごとの独自ルールや文化が優先される場合があります。迷った際は、社内の先輩や上司の文面を参考にすることをおすすめします。
